Eglantyne



明け方の静寂に包まれた 柔らかな揺りかご



未だ棘を意識しない 薔薇のつぼみ


「絶望だけを力に」わたしは前に進んだ 

Theme of Wanderer


I was waiting for someone,

who appears out of the wind

    and tells me the route.


I was looking for something,

that exists at the world's end

     and gives me the answer.



I don't know who that is,

     because I'm wandering alone now.


I don't know where that is,

     but I'm always wandering so. 

ジル――若い道化の肖像


頬に描かれた乾いたしずくを

ほんとの涙が二つに分けた


鏡の中の割れた仮面

かたっぽには笑顔

もう片方には哀しみ


鮮やかに青いかさぶたと

柔らかい頬の隙間には

寂しい風が住んでいる


振り返れば椅子には白い布

脱いだばかりの馴染みの衣装

力なくうなだれて

破れた傘のように


(もう雨にぬれていい、劇は終わったんだから)

鏡の前で彼はつぶやく



頬に描かれた乾いたしずくを

ほんとの涙が二つに分けた


舞台の上に何を置き忘れたのか

探るように そっと

ピエロはとおい拍手に聴き入る

ヨール「緑の民」の歌


海より産まれ 地に生き 空に憧れるものたち……


脆き弦とは裏腹に 雄々しく羽ばたくその調べ


人の子よ おまえの歌には翼がある 



Those who comes from the sea,

Who lives on the earth,

Who yearns for the skies...


Your melody is full of strength,

Contrary to its frail strings,

Soaring high in the air.


Human,

Children of the unsung heroes,

Wings are on your song. 

海の底


私の髪が藻のように絡みつくのも

真珠みたいな汗があなたの背中を滑るのも

このベッドが海に沈んだからよ


押し寄せては引いていく高まりを

波と呼んでもいいし


月光があなたの心の底までも

照らしている



狼のふりをして

無防備なその首筋に

噛み付いてやりたいけど


残念

満月には

ほんの少し丸みが足りない



いつも完全な太陽に

月も嫉妬するのだろうか

芸術とは闇の中でも色が見える花のようなもの

闇が深いほど鮮やかさを増す不思議な人の心が咲かせた唯一の花 

墓誌名


生々し 傷跡に見えし 墓誌名に


薄らと覆う 月日のかさぶた

君に会いたい


星になった君に


必死で手を伸ばしている



風になった君を


懸命に抱きしめようとしている



もう一度会いたい


決して叶わない願い



君と呼ばれると


いつも怒った君


懐かしさだけあふれる



君を想って流した涙


川になって君のもとに流れるなら


飛び込むよ


満足に泳げもしない僕だけど



星になった君に


必死で手を伸ばしている



風になった君を


懸命に抱きしめようとしている



もう一度会いたい


決して叶わない願い



もう一度愛してると言って


決して叶うことのない願い…… 


空がいつだって美しいのを


感じられないほど悲しみに染められた心を

透明な絵の具で

拭い去ってあげたい 


プラネタリウム


心の広さは、無限大じゃないかな

だって宇宙の彼方すら、一瞬で思いをはせることができる


愛の深さは、無限大じゃないかな

だってもうこの世にいない存在すら、すぐ傍にいるのだと感じることができる……


大切なことはいつも目には見えなくて

だから迷ったり焦ったりもするけれど


光よりも速いものがもしあるとするなら

それは、ひとの心のきらめきなのかもしれない

わたしがあなたを、恋しく想うこの気持ちなのかもしれない 

夏の終わりの妖精


「行かないで」
くもの糸をひっぱった
夏を振り向かせたくて

雲の隙間から
逃げてしまいそうな青を
引き留めたくて


夏の妖精


のぼれ のぼれ!

夏の塔を

のぼれ のぼれ!

太陽に 届くまで