【 小 さ な 夜 の 音 楽 】




台風が通りすぎた後の空は本当にきれいだ。

ぐるっと森を散歩して家に帰るころには、すっかり夜になっていた。

眠るのがもったいなくて、バラの葉っぱに腰掛けて星を見ていたら、根っこの方からぼくを呼ぶ声がした。


「ここだよ。ネリ。きみもおいでよ」


ネリはヨルガオのつるをするする登って、ぼくのとなりに座った。

花の香りがふわっと広がった。


「ここで星を見てたのね。ずっと探してたの。……ねえ、あれは何ていう星?」


「こと座。吟遊詩人の星座だよ」


動物のこと以外なら大抵ネリはぼくより物知りだけど、星座は別だ。

番人や仲良くなった旅人達に教えてもらったおかげで、今では何十だって名前が言える。


「じゃああれは……」


こと座のすぐ傍で、ひかえめに光っているひとつなぎの星を指差して、ぼくは言った。


「あれは飛んでいく鳥のかたちに見えるだろ。でもね、きつね座なんだ。

そのとなりの大きな星座が鳥なんだって」