大好きなスナフキンみたいに、丘の上に寝ころび誰に言うでもなく風につぶやく。カッコつけエリフキン。

いつもにこにこだれにでも優しくしていろだなんて
 それこそまったくの綺麗事ですね

 怒りさえ奪われたらいつまでたっても奴隷のままだ

どんなに酷いことをした奴にだって、探せばひとつくらいいいところはありますよ

 だからって許さなくともいいだけで

そんな事をしたら許されないよって言うけれど

 許す許さないって決めるのはいったい誰なのかを、まず教えてほしいもんだ

どこまでもどこまでもひとりで歩いていく道でしか

 見つけられないすてきなものってあると思わないか?

みんな僕を変わり者って言うかもしれないな

 でもひとつもおかしなところがないものってなんだろう

結局のところ自由っていうものは孤独ってことなのかい

 それもずいぶんとさびしい答えだね

この美しい星につまらない線を引いたやつは誰なのかな?

 あの鳥から見たら海にも山にも、どこにもそんなものは見えないのに

あの樹たちは歩いている僕を見てどんなにうらやましいかしれないね

 でも僕もあいつらがずいぶんとうらやましくてならない時があるよ

梢が風にふかれ木の葉がゆれるとき
 満開の花に蝶や蜂が蜜をもらいに来るとき
 乾いた土が久方ぶりの雨を飲むとき

 どうしても何かみんながうれしそうに話しているように見えるんだよ
 僕と同じように

難しい学問は大事だろうね

 でもまちがえて行き過ぎるとかえってくもった眼鏡をかけるようだ

哀しいときに哀しくない歌を歌わせるほど残酷なことはない

ほんとうにさびしい夜にこそ、涙はどこかに行ってしまうものだ

「もう死んでしまいたい、と言うこととほんとうに死んでしまうことは全然違うだろう

 そんなことを誰にも言えない人がほとんどだろうね

「焚火の前ではひとりでいたいが
 暖炉にはみんなで愉快に集まりたい、

 そんな小さくて大きなわがままのために僕はここに来るのさ

優しいふりをすることはいちばん楽でしょう

 心ない優しさでも喜ばれると知っている卑怯な奴らにとっては

弱さ怖さや不安、苦手やできないこと、
 かっこ悪さや惨めさ卑怯さ自分の臆病さや、あらゆる欠点と呼ばれるもの

 そういうものを隠さずさらけ出せること、見つめて向き合い、認めて逃げないことこそが
 最も強くて勇気のあることじゃあないのかい

たましいの指し示す方向に進まないのなら、きみは飼いならされた犬と同じさ
 首輪ってのは付ける方にも付けられる方にとっても窮屈な安心なんですよ

 動物たちや自然があんなにも真っすぐなのは、たましいと命の足並みが揃っているからだよ
 あいつらは最初から知っていて、けっして間違うことがないんだ

『こんなふうになりたい』、そう強く願ったなら
 きみは半分もうなっているのさ
 
 たとえそれを掴めなかったとしても
 想いはいつまでも胸に残り、伸ばした両手でたいせつな何かを包めるはずだよ

綺麗事は嫌いだよ
 だけど美しいものは好きさ、誰でも

 哀しみに瞳を汚されたら、涙で洗い流そうよ
 涙は僕らの宝石で、心臓は誰もが持っている楽器なんだ

 これも綺麗事だろうな
 ただ胸に手を当ててひたむきな音色を確かめて欲しいだけさ」

「『僕のことなんか解るわけがないよ』
 そう言いながら

 きみにだけは解ってほしいと願う
 いつもの矛盾が許される腕のなかでは
 きっと僕は幸せなんだろう

誰を恨めばいいのか分からないから
 自分を責めると一番楽だったりするよな

 結局、誰も運命ってやつには勝てないのかもしれない
 でも少なくとも闘う価値はあるんじゃないか

泣いていたひとの笑顔は雲間から差す太陽だし
 うずくまっていたひとがも一度立ち上がり歩き出す
 あの力強さうつくしさを見たことがあるかい

 僕はそれだけで厳しいこの一日を生きてゆける

「『世の中結局お金なんだよ、金がすべてさ――』

 確かにそう思っているのに
 言い切ってしまったあとに吹く
 この生ぬるいむなしい風はいったい何処からやって来るのか
 そうして僕はこれを何と呼べばいいのかさえ分からない

死にゆくとき憎い奴らの顔はなぜかひとつも浮かばない

 くらい景色だけのかなしい旅路だと思ったけれども
 最後に心からしあわせを願えるひとたち
 感謝したいひとたちに出逢い
 じぶんよりもずっと別れがたい大切な命が在る
 それ以上に満たされた人生はないのだと僕は知った」