《libri gratiam》―Scriptum ab Eleanor 

ante omnia gratias


Mulier nomine Elina


O misere et debilis, quam mirabile miraculum!


Libertas perfectus post longissimum tormentum


Etiam si vita mea deficit, lux non peribit


Primo, lauda animos meum


et sequentia scribe;


Reddere multa beneficia quae te servavit. 

皮肉な事だが花咲く前に

わたしは日陰に植えられていたことを知った

太陽の光はわたしを突き刺さないが

その下で咲く花が眩しい

ゴッホは「日陰を好んで咲く花もある」と言ったが

暖かな光を浴びていたいのに

強制的にそこに植えられて

日にあたる花に憧れている

どんなに陽のあたる場所に行きたくとも

固く張った根のせいで自分では動けない


だから吹きゆく風に乗せて

花びらや種子や時には自ら葉をちぎり

光の差す方へと飛ばす

それはわたしの歌

どうか届け

そちらには行けないけれど

あなた達のように本当は咲きたかったのだと

この叫びよ祈りよ届け

そしてこの青白いうすむらさき色の

ささやかなみじめなわたしを見つけたあなたに

あなたのためにわたしは咲こう


わたしの好きなネモフィラは

ギリシア語で『森を愛する』という意味の

もともとは密やかなひだまりを好む花なのだけれど

あの広々と開けすぎたひとつの影もない

海浜公園できらめいている

花のほんとうの気持ちなんて誰が考えるだろう

植えられた場所のこと動けないこと

あんなにみんな美しく咲いているから

誰が考えるだろう


枯れる時の名残惜しさ

花ひらく時の胸いっぱいのうれしさ

ほんとうの気持ちなんて


きっと花自身も気づかずに自然に咲いて枯れる

そういう花にわたしもなりたかった 

【Wings】

The craving that was never satisfied,


I finally got what I was looking for.


True freedom...


Soul wings.


It was always on my back,


I was just waiting for the moment to take off. 

入院中出会った高校生へ

It's hard to explain my life and feelings. It's very complicated, especially for young people.


However, no matter how blessed or abnormal life is inflicted on us, we all want the same thing.

I want to be loved by the ONE I love, and I want to be happy. It's that simple.

The simplest things are the most difficult in life. 

消えない虹、透明な絵の具

The sky is beautiful every time.

I've always wanted to paint a rainbow that never disappears.


But now,

For the heart so stained with sadness that its colours cannot be felt

With transparent paints

I wish I could wipe it away. 

刺されたナイフを引き抜いて

Fight,

Pull the knife out of your heart!


闘え!

胸に刺されたナイフを引き抜いて

ほんとうに大切なことを見たいなら

瞼を閉じなければならないが


もしあなたが真実を見ようと望むなら

その眼と、心の瞳との両方で


決して目を逸らさないことだ

弱いもの

弱い者を虐める誰かさんは、気づいていないのさ


もっと弱い誰かを見つけて叩いて、いい気分

気持ちがよくって辞められない


誰にも見つからないように

何なら「良い人」と呼ばれ尊敬され、わらいながら


どんな麻薬よりも中毒になるね

それは、この世で一番愉快な遊び


――自分の弱さから背を向ける、本当に弱いもの達にとって


ほうら、そんな事ばかりしている悪い子は食べられてしまうよ

背丈ばかり大きくなっただけの悪い子!

優しさ

『もう、ひとなんて信じないよ』


(………だってこれ以上傷つきたくないもの)



『優しい人が一番こわいよ』


(………気づいた時にはもう遅いんだもの)



でもそう言うきみの心にまだ優しさがのこっているのが、ぼくには見えるんだよ

主に憐れみを

「出来ない」「不可能」とはなから決めてつけてしまうことこそが、何より限界を作るだろう?

どんな発明も発見も最初は誰も信じなかったろう?

奇跡というものは実は必然かもしれないよ


この世界にあふれる、素晴らしいもの優れたもの美しいもの――それらを人間だけの力で作っただなんて欺瞞で

孤独な生き方は山とあるけれど、たった一人で生きてきたなんて嘯くのはまったくの傲慢さ


二つの国が争ってどっちが勝ったら神さまは「いる」と喜ぶのかな?

人が災害にあい酷い目に遭えば「いない」と、ほかの動物が滅びてもぜんぜんそうは言わないの?


無人島しか沈まないなら海面上昇してもいいのかなんて問うのは、きっと極端で

病気が治ったら宝くじが当たったら、ねえ分かるだろう、途端さ


これほどまでに自分勝手な人間を 報われなさ罪すべてを擦り付ける人間を

何処までも慈しみ愛したもう

主に、憐れみを

自由

ついに見つけたよ、自由を


それは何にも縛られないことでも

お金や時間がありあまるほどあることでも

あんなにも憧れた 透き通った風になることでも

空を飛ぶことでもなかったんだ


自分にとって何が「幸せ」なのかを

自分で決められること


それこそがほんとうの「自由」なんだ

研究者から博士への手紙

「博士、取り急ぎご報告致します

わたくしは、長年のわたくしの研究とは直接的には何ら関わり合いが無いのですが

只今調査中ですがおそらく明らかであります

地球上で最も輝度が高く

硬度の低い鉱石とは

人間の涙であります

それは宝石に類するどころか

あらたな元素の発見と言っても差し支えない程の

この上なく脆くまぶしい輝きを持っています

乱文ですがこれにて失礼いたします」

フィリップとシャーロット

どれほど 傷ついても信じてしまうのは なぜ?

     (運命の人……)

「赤い糸が途中で切れていたらどうしよう」って

不安がっていたわたしを きっと笑うわね

あなたの笑顔がすき


何度 裏切られても愛してしまうのは どうして?

     (共依存……?)

痩せて要精密検査の左胸に 問いかけるたび

「いいえ、そうじゃない」って 答えが返ってくるの

あなたの手がすき


賢いお馬鹿さん

気付くのがいつも 遅すぎる わたしたち

優しくて酷い人

正反対なのにそっくりな こどもみたいな わたしたち


間に合ったかな 

真夏の夜のあの歌と 伸びすぎた芝のうえで 交わされた見えない熱

何もかも亡くしてしまう前に


最後の夢はあなたの腕の中で息絶える事なの

まるで中世のお姫様みたいでしょ

だっていばらの城に閉じ込められたシャーロット姫を

連れ出した騎士のフィリップだったでしょ

忘れたなんて言わせない


最期の憧れは旅立つとき同じ歌を口ずさむ事なの

一緒には無理でもロマンチックでしょ

だってあなたは優しいふりをしてだましたわけじゃない

浮かれてほんの少しの間だけ元の姿に戻れたのよね

知ってるのよ誰よりも


何でもできて何にもできない わたしたち

おかしな へんてこ 変わり者のふたり


機械仕掛けの身体ががたついたら 油を注してあげなくちゃ……


『本当に好きなひとがくれるならわたし、ダイヤモンドなんかいらないの

ジュースのプルトップのね、あの銀色の輪っかでいいの――。』

ねえ信じられる? 本気でそう言って笑われたのよ


でもあなたは みんなみたいに笑わない

そんなわたしを けっして嗤わない


(【運命の人】に会う為に、その前に出逢う人もさ

ある意味、運命の人って言えないかな……?)

ゼンマイ仕掛けの口がぎしぎし言う 不器用に 止まりかけみたいに……


ねえフィリップ

恰好いい騎士様じゃなくてもいいの

運命の人 あなたでしょう

細すぎる指 わたしだけのもの

真っ白な肌は あなただけのもの


愛されたことなんかなくてもかまわない

誰からも愛されてきたあなたを 誰よりも愛してみせる


初めてほんとうのわたしを見て

初めて同時に恋に落ちたあなたを

春と蛇

傷つけられた分だけ 傷つけ返すくらい

きっと許されるでしょう それなのに


――隙間のないほど傷だらけの青い心臓が、痛まなかったらいいのに


奪われた分と同じだけ 奪ってやりたいと

思ってすぐに斜め上で 何もかも奪われきつく閉じたまぶたが


――「そんな事は出来ない」と、かぶりを振るのを辞められたら


いちばん美しく尊いと信じ 夢見ていた愛が

わたしをこんなにも 醜い生きものだと教えてくれた


あなたが惹かれた彼女が妬ましい、

あなたが見惚れる美人が羨ましい、

あなたと同じ年のひとがまぶしい、


時を巻き戻して、一番きれいだったわたしを見せられたら――

なんて愚かで浅はかな 見返りばかり求める

いじましいいやらしい女なのだろうと


あなたから、逃げたい のに

あなたに、逃げないで と


この胸に、喉までも、とぐろ巻き巣くう ぬめる蛇が生まれたのは

はじめて抱いた巨大な嫉妬の卵を あたため孵化させたのは

祝福された 二度目の春のせいではないこと


まだ信じて愛したいと願う 卑怯さと醜さとを

櫻木の誠実に恥じぬよう

せめても認めようと思う


弔いの星

原罪の重さに耐える事の出来ない

雪のような真白き人々は

そのくびきから逃れ 擦り抜け

元居た世界へと還ってゆきました


天使と修羅が激しく寂しく隣り合う

金剛真綿の戦士たちは 自らを苛み

傷つき息絶えてしまいました


大き過ぎるまなこには毒が注がれ

鋭く尖った耳には棘が突き刺さり

心の臓はとめどなく深紅の血を流すのです


たくさんの人々を癒し慰め

報われても

その魂は現世を抜け出すことでしか

救われなかったのです


彼らはみんなを分かっても

みんなみんな分からなかったのです


でもどうか

深い優しさの器に受け止めきれない

あふれる涙

絶望を孤独を悲しみを怒りを――


弔いの星へと


役目を終えた全ての命が星になるのなら

宇宙がどこまでも広がる理由にはなりませんか

人だけでなく動物や花々も

ならば彼らは眩い一等星に

英雄たちは本当に星座になったのです

この闇夜を照らす道標に

果てしない時を超え

寄る辺なき旅人は彼らを頼りに歩くのです

憧れを道連れにして……


夢物語と妄想と謗ることでしょう

誰もが信じず大嘘つきと罵ることでしょう


わたくしは本当に不思議なものを見ました

夜毎、真実純粋な青が眩しく灯るのを

祖母の後ろ愛の源かと紫に輝く星や

失われた命が太陽系のように腰から連なり流れ出るのを

放たれた黄金の目持つ純白の鳥

輪廻するともがらを……


永遠の始まり

混沌に生まれ

罪科を背負ってなお消えることのない


それは光です


確かに疑うべくもない 限りない愛の似姿です